アナログのガスセンサをアマゾンで一式入手しました。(9個セットで\2000くらい)ガス種により9種類に分かれています。汎用ガスセンサは完全に1種類のガスだけを検知するものではなく、目的ガス種に対してそこそこの感度があるもののほかのガスとも干渉するようです。例えば大気汚染センサとして一番よく使用されるMQ135はCO2/ベンゼン/アンモニア/硫化水素/アルコール検知などができます。
まず、秋月電子のカタログで方式の違う2種類のCO2センサの原理を勉強しました。
購入したアナログセンサについての情報を以下に示します。
これらのセンサを使ってアボカドが熟成する過程で発生するガスを測定することを試みました。
バナナは緑から黄色に変化する過程でエチレンガスを放出するのですがアボカドはエチレンガス
放出は極めて少ないことが知られています。密閉箱にセンサを配置しArduinoのADCにMQ09を
除く8個のセンサを接続しました。
各センサはセンサ部に吸着したガス等を取り除くためを加熱する機能があります。信号のバック
グラウンドレベルを安定させるためにはスタンバイ時間が必要です。30分くらいで到達レベルを
確認できました。このレベルは単なるセンサのオフセットの場合とMQ135のようにCO2のレベル(400ppm)を示すものが混在しています。今回は増加分を観察することを目的としました。
次にアボカドをケースに出し入れしてみました。約9分間のセンサ変化の測定結果を示します。
ガスセンサを使って、アボカドから発生するガスの経時変化を測定しました。1日に一回10分間
(最初の1分はアボカド無しで)で8日間測定しました。
8日分の変化グラフを示します。
ガスセンサの変化指標をどうするか迷いました。それぞれのセンサでバックグラウンドレベル(アボカド無しの最初1分間)が異なります。MQ135はCO2のレベルを示しているのかもしれませんが、他のセンサはMQ135と同じように何かのガスの大気中濃度を示しているのか単なる個体差かもしれません。 今回はそこまで確認せず各センサのバックグラウンド値に対しての比を変化指標としてみました。以下に示します。
単純な信号の増加量(10分後の値ー初期の値)での順番はMQ4>MQ2>MQ135>MQ3の順で
メタン>プロパン>硫化水素or水素>アルコールでした。
バックグラウンドとの比を使った指標ではMQ4=MQ3>MQ135=MQ2の順でメタン=アルコー
ル>硫化水素or水素=プロパンでした。アボカドはバナナのように熟成過程で発生するエチレンガス発生はほとんどないことが知られています。メタン・プロパンは部分的な発酵が進んでいることが考えられ水素?・アルコールはカビの発生によるものと考えられます。硫化水素は腐敗が起こ
ると発生するようです。何がどうなっているのかを突き止めるためには、ガスクロマトが必要なようですが,,,,,,,,, 次回は、カビに着目した実験結果を報告する予定です。
アボカドのカビ臭を検出する実験です。箱で売られているみかんのカビを検出する場合、箱をポンと叩いて段ボールの持ち手の穴から臭いを嗅ぐことでかびているかどうかを見分けていると話があり、アボカドも同じように箱単位でカビ(変色~追熟過程~カビ発生)を検出できるのではないかと検討しました。一般的にカビが発生するとアルコールや水素成分が発生し腐食が進むとメタンやプロパン類や硫化水素が増加するとchatGPTが言ってました。
私が実験に使っているガスセンサで検出できるかどうかわかりませんが、味覚センサと同じように臭気センサもバイオセンサの開発が進んでいるようです。味覚バイオセンサの初期化は水でセンサを洗うという単純なものですが、臭気センサの初期化には真空チャンバが必要なようです。
上記のような大掛かりなものではなく、汎用ガスセンサの組み合わせで検出できないか
また、資料に赤外や紫外光を照射することで初期化ができないかを検討しました。
アボカドのカビを発生させるため、果肉ペーストを容器につめ24時間放置しました。
カビが生えた容器をガスセンサ容器に入れ、各ガスの上昇を観察し途中、赤外線と
紫外線を各1分照射する試験を行いました。以下、実験シーケンスを示します。
実験の結果を示します。赤外線は初期化効果はありませんが、紫外線は初期化(カビ臭分解?)
効果があるようです。
もう少し長時間で各センサ値がどのように変化するかを調べました。これまではサンプル投入から
10分ですが1000分までの変化を調べました。期待に反するセンサ値変化が起こりました。飽和す
るのではなく減少していきます。
密閉容器内で何かが起こっていると考えるより、感度変化が起こるのは投入後10分程度で上昇飽和し
その後センサ値は減少するようです。密閉空間で測定することを前提にしてない仕様なのでしょうか。
追試を行いました。3個用意したのサンプルの残り2個をクリーニングした測定容器に入れて1000分の
長時間測定を行いました。
これまでのデータから投入から30分(飽和前)のデータを使って、カビ発生無し(サンプルAの
初期測定:カビ発生前)とカビ発生あり(上記B,Cサンプル)の各ガスの上昇率を比較しました。
直読のADC値を比較すると、各ガス成分でカビありの場合、無しに比べ2倍以上の差があります。
サンプルケース数が異なることもあり、上昇比率で比較すると、カビありではアルコールの上昇率
が顕著(1.22→2.00)です。メタン類(1.45→2.00)の上昇しています。
カビ発生に伴い位アルコール成分が増加することは判りましたが、測定再現性や定量化の難しさ
を実感しました。
次回は、機械学習との組み合わせの前段としてガス成分の可視化を検討します。
ガス成分評価(可視化)システムの開発
食品類に感度がありそうな5つのセンサをチョイスし、取り出しが容易なケースを使いガス成分
分析システムを試作しました。ガス成分を推定する目的とはかけ離れますが、5つのセンサの信号
を学習することで食物の状態を推定できないかを調べる役に立てばと考えました。
ガス成分評価システムの概要を以下に示します。
可視化方式は、トレンドグラフ表示とセンサ間の信号強度比較表示をレーダーチャート風に示します。
過去に測定したアボカドの経時変化(8日観)のデータをヒートマップ表示した結果を示します。
初期はブタンの比率が大きく、最終的にはメタンの比率が大きくなっているようです。
また、過去に測定したアボカドペーストのカビデータを表示してみました。腐敗が進行するとメタン
やブタンの発生が多いようです。アルコール成分の増加盛りますが、メタンに比べ小さいようです。
アボカド以外の食品への応用例
最後に、試作してみて判ったことはサンプル容器のサンプル残留ガスの影響を短時間で初期化
(リフレッシュ)するかが課題です。サンプルBOXとセンサ部を分離する方式が有効かと思い
以下のような施策を始めました。