その1 nanovna-saverを利用したGUIプログラム
2024年4月のブログで、果物の非破壊インピーダンス測定についてレポートしました。今回は、nanoVNAをWindows-PCと接続して簡単に操作できるようにGUIプログラムを作ってみました。また前回は、導電性ゲルを使用した非破壊プローブ(平行ケーブル)でしたが、今回は、電極近くまで同軸ケーブルにしました。30MHz付近の変位点がなくなり良くなったと思います。
GUIプログラムですが、まだこの時点では測定は前回同様「nanoVNAsaver.exe」を利用させて頂きました。GUI化は測定データを読み込み解析する部分のみのGUI化です。(後ほど測定部分も含めたGUIプログラムを説明します)
まず、測定データをPCに保存するまでの操作を示します。
測定部のCUIプログラムです。
上記データを読み込み、各種グラフを表示するGUIプログラムの操作画面を示します。複素インピーダンス、インピーダンス絶対値、Lucasのグラフをタブで選ぶことができます。
データ表示GUIプログラムのコードを示します。
解析のためには、データ動詞を比較する必要があると考え、2つのデータを比較するGUIプログラムの作成しました。比較するグラフは、インピーダンス絶対値とLucasにしました。(複素インピーダンスは省略)
比較プログラムのコードを示します。
その2 メロンの経時変化測定(比較GUIプログラムの応用例)
その1で作成した比較GUIプログラムを使って、マスクメロンのインピーダンスを食べごろになるまで毎日測定しました。(プローブは取り付けたままで)
毎日測定したのですが、変化が判りやすいように1,3,5,7日の2日置きの比較グラフを示します。
20MHzでのインピーダンス絶対値は0.69から0.54に22%減少していることが判ります。
成分変化(糖分が増えているから)なのか判りませんが、変化を取れ得ることができました。最後に8日分の変化を比較してみました。大きな変化が起こっていると思います。Lucas虚部の変化が著しいと思いました。メロンはおいしく頂きました。
その3 液体のインピーダンス測定システム
メロンの経時変化測定でインピーダンス変化を捉えることができましたが、何が起こっているのか分からないので、少し踏み込んで液体のインピーダンスを測定することにしました。GUIプログラムもグラフ表示や波形比較といった解析だけでなくnanoVNAの測定操作も取り込んだものにしました。顕微鏡台にnanoVNAを固定して、平行針電極をサンプル桶に浸すプロトタイプを作ってみました。
nonoVNAの制御は、nonovna-saver.exeを使っていましたが、今回は「nonovna.py」ライブラリを活用させていただきました。測定レンジの設定などWindows-PC側で行えるようになりました。(感謝です) また、Smithチャートもライブラリを使うと簡単に表示することができます。設定~測定・表示を一貫処理するGUIの操作画面を示します。
設定・測定・表示・保存 GUIプログラムのコードを示します。
測定したデータ比較用GUIプログラムです。保存した.ntwkファイルを使用して比較を行います。比較グラフは、インピーダンス絶対値と位相としました。比較データは基本2個としていますが、4個まで対応できるプログラムも作りました。以下にGUIプログラムの操作画面を示します。
プログラムコードを示します。
その4 液体のインピーダンス測定例
今回製作した液体インピーダンス測定システムを使って、“コーヒーと牛乳の比較やコーヒー牛乳にしたときはどうなるのか”、少し味が薄いいところで“お茶とお白湯と紅茶の違いはどうか”、“キビ糖水の濃度を変えた場合どうなるのか”を評価してみました。
まず、天然水・コーヒー・ミルクの比較です。測定帯域はこれまで(1~100MHz)と違って(1MHz~1GHz)とワイドレンジにしました。
天然水に比べ、コーヒーやミルクは大きく異なりますが、なぜかコーヒーとミルクは似ているようにも見えます。ここでデータ比較GUIプログラムを使いました。比較してみるとやはり違います。
では、コーヒーとミルクを混ぜるとどうなるのか、やってみました。右図にコーヒーとコーヒーミルクの比較グラフを示しました。200MHzまではコーヒーに近く、200MHz以上ではミルクに近いという不思議な結果となりました。
次に、天然水・お白湯・紅茶といったうすもので感度が得られるのかを比較しました。意外な結果です。水道水をステンレスポットで沸騰させて冷ましたお白湯のインピーダンスが一番高いかと思っていましたが、紅茶>天然水>お白湯の順番でした。お茶は電解質成分を中和しているのでしょうか。あ白湯は不純物がいっぱい含まれているからなのでしょうか。
最後にキビ糖を使った濃度変化実験です。九工大の先生が味覚センサ(5味)を開発して味を定量化しましたが、5種類のバイオセンサを使っていると聞きました。インピーダンスプローブ1本で同じようなことができれば凄いと思うのですが、、、その可能性確認の意味も兼ねて、甘さ変化について検出可能か検討しました。キビ糖2gを天然水で薄めて、0%,3%,6%,9%の溶液を作りました。
濃度が高くなるとインピーダンス@100MHz付近は小さくなります。プロファイルにも多くの情報が含まれていそうです。